音楽を食べた

個人的メモメモメモ

ONE OK ROCK 人生×僕=(私の人生を変えた1枚)

 

 思い返せば、私がその1枚に出会ったのは小さな嘘からだった。

 人生を変えたなんて少し大げさかもしれない。でもこの1枚は、確かに私の音楽への新しい扉を開いてくれたと思う。

 

それは中学生の時。たわいもない会話の中で、友人の口からふと出た「ONE OK ROCKって知ってる?」という問い。「少し聴いた事ある。」と私は答えた。

このアルバムかっこいいから!と満面の笑みで友人から渡されたアルバムのタイトルは「人生×僕=」。

 

でも正直「聴いたことがある」なんて嘘だった。1曲も聴いたことはなかったし、バンド名すら初めて聞いた。流行に敏感な友人に置いていかれたくなくて、見栄を張って、私は小さな嘘をついたのだ。謎のカタカナ“ワンオクロック”…。なんだよそれ。何者かも知らない"ワンオクロック"のCDを自宅へ持ち帰った。

 

Jinsei × Boku =

Jinsei × Boku =

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 借りてしまったからには聴かなくてはと、自宅でCDプレーヤーの再生ボタンを押した。音楽を聴いて、頭の中が「!」と「?」でいっぱいになったのを、いまでも覚えている。ジャンジャンと騒がしいギターやドラム、叫ぶように歌うしゃがれた声、日本語と英語の混ざり合った歌詞。

 

 これまで、テレビなどから聴こえるポップミュージックを浅く知っている程度だった私にとって、こんなにも攻撃的で強い音楽は、ハンマーで頭を殴られたみたいに衝撃的なものだった。

 

 曲の意味はよくわからなかったし、正直どんな良さがあるのかもはっきり分からない。でも、なぜかその時心の底からかっこいいと思ったのだ。

 

 ”よく分からないけどかっこいい”このバンドをもっと知りたい。彼らの音楽をもっと聴いてみたい。友人に感想を伝え、チケットをもらってライブにも足を運んだ。「人生×君=」ツアー。私の人生で初めて音楽のライブだ。

 

 

 今でも鮮明に覚えている横浜アリーナ。会場前の長蛇の列がなんのためのものなのかも、グッズというものがあるのも、何も分からなかった。周りには、髪の毛を明るい色に染め、ピアスがたくさん開いている少し怖そうな人がたくさん…。なんだかすごいところに来てしまった。

 

 ライブが始まる。指定席の後ろにある立ち見席だった。あんなにステージは遠いのに、メンバーの姿なんて米粒みたいに小さいのに、生の音楽というものの迫力に圧倒されていた。アグレッシブな演奏や力強い声に耳を奪われる。何回も何回も聴いたアルバムの曲なのに、ノリかたも手の上げかたもわからない。「すごい…。」それしか言えなかった。

 

何万人と集まった会場でアルバム曲を歌い上げる彼ら。そして、アルバム1番最後に収録されている、「69」が披露された。

 

 "夢だけ見てりゃ生きていけるような そんな時代でもなくなってきた だからこそ もっと強く たくましく 夢を現実にするために 人生かけて俺らは 何かひとつやり遂げる必要がある”

 

69

69

  • provided courtesy of iTunes

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 この曲だって、家で何回だって聴いてきたはずなのに、ライブでvo.Takaが自分に言い聞かせるようにしっかりと発したこのフレーズが、私の頭の中で、パズルのピースがピタッとはまったように入ってきたのだ。

 

そう、「人生×僕=」。読み方は「ジンセイカケテボクハ」。 私は今まで人生かけて何かしようと思ったことはあっただろうか。精一杯やり遂げようとしたこたはあっただろうか。

 

 彼らは、自分たちがかっこいいと思ったことをただ真っ直ぐに歌っているのだ。誰かに媚びることなんてない。人生をかけた音楽をただ目の前にぶつける。きっと、だからかっこいいと思える。

わからないけど、でも確かにそう思える。

 

自分たちに誇りを持って、音楽に誇りを持って。

きっと決して簡単ではないけれどこの道を突き進んで行くんだ、という決意がこのアルバム、この曲にはある。

 

このアルバムに出会い、ロックバンドの泥臭さを知り、まっすぐに突き進むかっこよさを知った。

私の音楽への扉を開いてくれた。

人生かけて、なんてちょっと大袈裟だけど、私は人生かけて音楽と向き合ってみたい。そう思えるようになったのだ。

 

だから、もうこれからは、あまり見栄を張ることはやめようと思う。これからどんな素敵な音楽に出会っていけるだろう。たくさんの音楽に触れて、たくさん発見したい。でも、きっと、このアルバムも忘れない。

 

https://www.amazon.co.jp/ROCK-2013“人生×君-TOUR-LIVE-FILM/dp/B00EH91L8U

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2019年上半期私的ベストアルバム

 

2019年上半期、私的 ベストアルバム

(先日、ある課題で書いたものをそのまま貼ります。)

 

 

音楽シーンへの登場から約2年。

MVでも注目を集めてい た「メルシー」や「TOKYO LIAR」のCD音源化を含め、 13曲が収録された初のフルアルバム。

 

これまで 、人間に蔓延る負の感情や孤独、そして世の中へのアンチテーゼを、攻撃的で悲観的な歌詞で表現してきた。

 

『空っぽのままでも迫る未来 終わってしま うならその程度/蹴り落としてでも掴み取れ』

 

表題曲「2 0XX」で歌われているのは、”理想を追う虚しさや皮肉”、 そして”自分への期待や救いを掴む意思”。

 

この背反する感情を当事者として問い、歌うことで、神僕の世界観はより説得力のあるものとなる。

 

vo.どこのだれかの圧倒的な表現力で、その世界観はよりリアルなものとなって私の耳に届くのだ。

 

 

また、今回のアルバム の中で一味違う雰囲気を感じるのは、どこのだれか作曲「破滅のオレンジ」、和泉りゅーしん作曲「沈黙」だろうか。

 

「破滅のオレンジ」では曲頭から⻭切れの良いリ ズムを刻みつつも、嘆き叫ぶように歌われるサビのギャッ プが斬新であるし、「沈黙」ではジャジーな雰囲気と、女性目線の歌詞が相まってなんとも言えない上品さがある。

 

多くの楽曲は東野へいとが作曲をしているが、神僕の世界観をさらに広げてくれると感じた。

 

彼らの音楽をもっと読み解きたい。歌詞の意味を理解して、曲の構造の意図まで知りたい。そんなことを思った一枚であった。

After the Rain @富士急 彼らが提示する「世界を変えるひとつのノウハウ」

誤字脱字その他間違えあったらスミマセン。悪気は全くないです。

 

ひとつ前にアップしたコチラ↓は、言葉の羅列レポート。ただのメモ。

shumfrn-11.hatenablog.com

 

 

 

とある課題用に約800字にまとめてみた。↓

字数制限を設けると全部を書ける訳ではないので難しかった。(ちなみに25日公演)

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After the Rain@富士急ハイランド レポ

 

f:id:sHumfrn_11:20190827161148j:plain

 

見たことをつらつらと書いたレポです。

長いです。あくまでレポート、自分の日記代わりです。

名前の敬は省略させていただいてます。間違えあったらスミマセン。

 

 

After the Rain824日、25 日の2日間に渡って

After the Rain 2019〜真夏のそらまふ大発生!!@富士急ハイランド〜』を開催した。

 

2日目のレポをグダグダ書いていきます。

 

 

 初の野外ライブということで、心配されていたのは天候。不思議なことに彼らのライブは雨が降ることが多く、今回も数日前までの天気予報では生憎の雨予報であった。 が、なんとライブ初日、天気は晴れ。快晴とまでは言えないものの、どうにか太陽が顔をだしてくれた。まさに「After the Rain」、天候も彼らに味方してくれたようだ。

 

 会場に足を踏み入れると、思わず声が漏れてしまう。広い。わかってはいたけれど、広い。屋内とは全く異なる雰囲気にワクワクが止まらない。

 

 開演時間を少し過ぎて、会場である富士急ハイランドをイメージしたポップなオープニングムービーがスクリーンに流れ始める。会場は一気に大きな歓声に包まれた。

 

 そう、全国各地から、また世界から、ここにやってきた何万人というファンたちが、今か今かと彼らを待ちわびている。今回の会場は都心から少し離れているため、決して行きやすいと言える会場ではないのに。それでも多くのファンが彼らの音楽のために足を運び、ここに集まっている事。大きな歓声を聞いて改めて気がついて、すごいところに来てしまったと感じる。

 

 スクリーンにはカウントダウンが映し出され、センターステージで巨大な白い球が膨らんでゆく。「ゼロ!」のタイミングで巨大な球がぱっくりと割れ、中からそらるとまふまふが姿を現した。

 

 まず披露されたのは昨年リリースされた2ndアルバムに収録されている『絶対良い子のエトセトラ』。ポップなイントロが流れると同時に前方ステージからは花火が打ち上がる。花火の驚きと、待ちに待ったふたりの登場に、会場は割れんばかりの大歓声だ。「AtRです!」と叫ぶと、大きく手を振りながら元気いっぱいに歌う。

  

 続く『四季折々に揺蕩いて』では、そらるが腕をあげた拍子に袖が帽子に引っかかってしまうプチハプニングも。その後のMCで「最近ハプニングに慣れっこになってしまった」と自身のツアーや6月に行われたフェスでの音響トラブルと合わせて会場を笑わせる場面もあった。

 

 そして、前2曲とは雰囲気を変えロックナンバー『解読不能』へ。ステージからは激しい炎が吹き出し、会場はヒートアップして行く。「懐かしい曲をやります」と切り出した『負け犬ドライブ』では、ギターをかき鳴らし二人が並んで歌う姿が印象的であった。また、会場にはドローンが飛び、会場を俯瞰的に撮影している。周りは大自然。その中にある光を放った大きな会場は、まるでひとつの王国があるかのようにも見える。

 

 立て続けに披露したのは、そらるのソロ曲『アイフェイクミー』。映画”賭ケグルイ”の主題歌でまふまふとの共作でもあるこの曲、まふまふはギターとして参加。歌とギター、2人が背中合わせで奏でる姿はまさに「相方」という表現がぴったりだ。

 

  MCで、2ndアルバム[イザナワレトラベラー]がリリースされてからのライブは今回が初めてである事を語ると、アルバム収録曲からバラード『箱庭鏡』を披露。こちらは本来そらるのソロ曲であるが、まふまふとのツインボーカルで美しく歌い上げる。続いてまふまふのソロ曲『快晴のバスに乗る』をポップで軽やかに披露すると、バンドメンバーのインスト曲『Sparkle』へ。夏らしいさわやかなサウンドを響かせ、会場を魅了した。

 

 その間に衣装チェンジを終え再度登場した2人は、甘酸っぱい恋を歌った『恋が始まる方程式』を披露。二人の美しいハモリと日が傾き始めた空間とがマッチして、ノスタルジックな世界観に包まれて行く。続く『マリンスノーの花束を』では、二人はトロッコに乗り込み客席の間を進む。なんと二人の手にはミストガンが握られ、「みんなに水をかけちゃいます!」と客席にミストを噴射すると観客からは黄色い声が。

 

 会場を一周しステージに戻ると、続けてまふまふのソロ曲『曼珠沙華』を披露。まふまふが「みんな歌えますかー?行くよー!」と呼びかけると「歡迎來到桃源郷!」と会場が呼応する。


 続いて『アンチクロックワイズ』『ハローディストピア』と激しいハードなロックサウンドを畳み掛けると、EDM風でアップテンポな『ブラッククリスマス』へ。2人で目線を合わせながら笑顔で歌い、セリフの場面では、会場中を黄色い歓声で溢れさせた。

 

 傾きかけていた日もだいぶ沈み、夜の訪れを感じ始める。MCではそんな夜の訪れを、「俺たちの時間だ」と日々の生活リズムについてゆるく語る。彼ららしい会話に思わず笑みがこぼれる。

「夜っぽい曲をやります」と披露したのは

『アイスリープウェル  』だ。あたりが暗くなってきた事で、サイリウムの光がより美しく輝く。

 

 立て続けに『彗星列車のベルが鳴る』をノスタルジックに歌い上げる。「果てしない闇の向こう」とハモリを2人が向き合い歌う姿は、ここまで様々な事を乗り越えてきた2人の力強さを改めて感じさせてくれた。

 

 続くMCでは、ライブ前に体調を崩していたそらるの話に。(まだ咳が残っており辛そうだ)自身のCDリリースイベントを延期してしまったことや、このライブのバンドメンバー、相方であるまふまふが心配してくれたことを語り、改めて「ありがとう」と口にする。 それを受けまふまふも「サポート代、お菓子を分けてあげた代、割り増しで」と会場を笑いに包みつつ、正直ライブができるか不安だったとも語り、ファンからのメッセージに感謝を述べた。

 

 本編ラスト、「こんな荒んだ世界を変えたいだろ 聴きたいかー?」と切り出したのは今回のライブのために制作された『世界を変えるひとつのノウハウ』。ポップで可愛らしいメロディの中に、「役柄不明で終わりは遠慮しよう」「限りある命のエンドロール 意味のないものはないもん」と、どこかハッとさせられる歌詞が心に響く。ちょっとした振付けも取り入れながら楽しそうに歌いあげると、感謝の言葉とともにステージを後にした。

 

 

 アンコールに応えステージに登場した2人はライブグッズのTシャツに身を包み、アルバム「クロクレストストーリー」から『チョコレイトと秘密のレシピ』を披露。まふまふの可愛らしさと透明感のある歌声とそらるの伸びやかで暖かみのある歌声がやわらく調和する。

 

  曲が終わり、最後のMCではステージにセミが乱入するというまたしてもおかしなハプニング。

 

  日は沈みきり、青と白の美しいサイリウムが会場を輝かせる。「青と白で水色っぽく見えるのが良い」と語るまふまふ。そして、10月にまたAtRから新しい曲を投稿する、来年何するかについても考えている、とこれからの活動にも意欲的な姿勢を見せ、ファンを喜ばせた。

 

 「僕たちのはじまりの曲です」と歌い出したのは彼らの代表曲のひとつでもある『桜花ニ月夜ト袖シグレ』。サイリウムの色がピンク色に変化し、曲の世界観に合った美しい世界が広がる。

 

  最後に披露したのは『セカイシックに少年少女』。「声出して帰ってください」と叫び、最後まで力強い歌声を響かせる。会場全体がスクリーンに映し出されると、サイリウムの淡い光がまるで星空のように見える。「ありがとう」と何度も口にする2人の表情からは満足感と達成感がうかがえた。

 

  曲の締めには会場全体でジャンプをし、更に肉声で「ありがとうございました!」とバンドメンバーとともに頭を下げた。「夜道気をつけて」「お風呂はいって寝るんだよ」とファンに声をかけながらステージを後にする。

 

 そこで観客を驚かせたのは、ライブの余韻に浸る間も無く打ち上げられた十数発の花火。彼らの粋なサプライズに見惚れてしまう。

 

 初の野外ライブを大成功に収めた2日間。きっと、彼らの勢いはとどまる事を知らないし、これからもっともっとステキな事を成し遂げてくれる気がする。

 そう感じられるのは、私たちを楽しませてくれるから!というだけでないと思う。『世界を変えるひとつのノウハウ』で歌われている、「心に空いた穴は埋めっこしよう」を2人が見せてくれるから。彼らはきっとこの世界を変えてくれるんじゃないかとそんな気がするのだ。

音楽のカタチ の話

 

先日、「J-popの未来」をテーマにした

講演会を聴きに行きました。

 

すごく濃い2時間で、音楽のことについてたくさんたくさん考えました。

 

 

https://note.mu/shumfrn_11/n/n85035db6e349

 

https://note.mu/shumfrn_11/n/nb031567bc295

 

 

ハッピーフライト

 

 

2008年、

ハッピーフライト」という映画が公開された。

矢口史靖 監督脚本、

キャスト陣は、田辺誠一 綾瀬はるかをはじめとした豪華な顔ぶれである。

 

タイトルから分かるように、

飛行機や空港を舞台にしたストーリーだ。

 

先日、この「ハッピーフライト」を久しぶりに観た。

久し振りにというか、

もう20回は観ていると思う。

 

なぜか定期的に観たくなる映画だ。

 

 

 

映画の内容はもちろんであるが、

それ以上にこの映画に華を添えているのは、

この曲だと私は思う。

 

 

Come Fly With Me

Come Fly With Me

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誰しもが何処かで聞いたことがあるのではないか。

フランク・シナトラの有名曲だ。

この曲をリードに、

全12曲を含むアルバム「Come Fly With Me」が発売されたのは、1958年1月のこと。

 

この曲について、

少し、旅客機の歴史を交えて記したい。

 

 

今でこそ、当たり前のように空を飛び、

それなりの料金を支払えば乗ることができ、

事故に遭う確率は約10万分の1だとも言われる、

安全な乗り物、飛行機。

 

しかし、

 

1980年代といえば、

これまで命がけの乗り物であった飛行機が、

ようやく長距離国際線飛行を確立させ、

旅客機の大衆化が始まろうとする、

飛行機の成長途中の時代。

 

それに加え

 

一機に搭乗できる乗客数はやっと100-200人、

料金も高く、

現在より墜落事故なども多く発生している。

一般市民にはまだ容易に手が出せる乗り物ではないのが実際のところだっただろう。

 

 

そんな飛行機の発展途中の時代に、

フランク•シナトラは

「Come fly with me
Let's fly, let's fly away.」〜♪と歌うのである。

 

 

「鳥たちを越えることができる」という歌詞には

なんだかロマンを感じるし、

「ハネムーンには空の旅がベストだ」なんて言われたら世界を旅したくなる。

 

まさに、当時のアメリカの人々に

空への夢を与えたのではないだろうか。

 

この曲を含んだアルバムは、

全米チャート1位に輝くことになる。

 

 

 

 

近い将来、

宇宙飛行士以外の人が月に行けるようになったら、

「さあ月へ行こうよ!」的な曲を出すアーティストが出てくるということかもしれない。

 

 

 

 

飛行機に乗って空にいる優雅さというより

これから大空へ飛ぶんだという高揚感。

 

搭乗する便のチケット、

様々な言語が飛び交う空港内、

大勢の人が行き来するロビー、

スーツケースを引きずる音、

ずらっと並ぶ飛び立つ前の飛行機、

搭乗口や便名が表示された大きなパネル、

搭乗時間を知らせるアナウンス、

グランドスタッフ、パイロットやCA、整備士、

 

非日常的。

 

そんな空間でこの曲を聴いていたい、と

私は強く感じる。

 

飛行機に乗る機会などあまり多くはないが、

次もきっと空港ではこの曲を聴こう。

 

松田優作はタバコの跡

 

 

上野森美術館にて行われている、

立木義浩さんの写真展 "ー時代ー" を観た。

 

www.ueno-mori.org

 

様々な写真が展示されているが、大きく3つほどに分けられるだろうか。

有名人や芸能人を中心としたポートレート

日本のみならず、世界の日常に触れるスナップ、

そして、スクエアという異なる雰囲気のデジ六、である。

そのなかから私は今回2つの展示に触れたい。

 

 

率直にいうと、私はポートレートがあまり好きではない。

特に、家族写真や芸能人の宣材写真など、

写真集的な''ザ・ポートレート''的な写真。

カメラマンの指示によって、ポーズを取った写真を好めない。

 

大きな理由があるわけではないが、カメラマンが作り出した必然よりも、

被写体や環境による偶然性のある写真の方が個人的に魅力的だと感じるからだ。

 

今回展示されていた芸能人や有名人のポートレートも、

”写真”を見るというより、

そこに映った芸能人や有名人の豪華さに目が行ってしまった。

というのが正直なところである。

 

が、

私の目を奪った一枚があった。

 

勝さんと玉緒さんの夫婦の写真である。

勝さんが玉緒さんの肩を抱きにこやかに笑顔を見せる写真は、一見他のポートレートと同じように仲の良い夫婦の記念写真にすぎない。

しかしこの写真、夫婦の背景にはスタジオの機材らしき照明が写り込んでいたり、背景の剥がれ具合が写っていたりと、

撮ろう!と指示をして撮ったとは思えないのである。

 

凛としている中に、どこか和やかさや柔らかさが感じられるのだ。

”こんなことを表現しよう” ”この人のここを見せよう”と細かく考えられたものではなく偶然撮影されたかのような、照れ臭さい表情も見える。

 

玉緒さん勝さん夫婦と、立木さんとの関係を調べていると、ネットである記事を発見した。

 

平山祐介が聞く「立木義浩さん、今まで撮った一番印象的だった人は誰?」|OCEANS オーシャンズウェブ

 

ある雑誌のインタビューで、一番印象的だった人は誰か?という質問に対し、勝さん玉緒さん夫婦の写真だと答えているのだ。

 

この記事曰く、

やはりこの写真は公式の撮影でのショットではなく、オフショットなのだという。

勝さんの撮影現場にたまたま来ていた玉緒さんを誘って撮影した夫婦写真らしい。

であるからこその、自然な距離感に愛を感じられる。

 

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もう1点は、

二階に展示されていたスナップ『マイアメリカ』の写真である。

天井近くまでずらっと縦に様々な大きさで並べられた写真には圧倒される。

 

1980年ごろ(約40年前)のアメリカの光と闇、建物、人、風俗、エロス、

そしてまさにその「時代」を表すものなのだ。

 

そこには、アメリカの自由で不自由な現実が写されている。

 

人々は、笑い、踊り、歌い、喜び、輝く。

そのすぐ側には、恐怖と闇、束縛があるということだ。

 

何気無い平凡な生活を捉えたものの写真の隣には

いくつかの銃を写した写真が展示され、

 

人々が踊っているような明るい写真のそばには

KKKによる黒人差別の写真が展示され、

 

輝かしいブロードウェイのような街や人の写真のそばには

迷彩柄の軍服姿の男たちの写真が展示されている。

 

それから40年という年月が流れた。

形は変われど、現在も同じように「時代」は流れているだろう。

 

「私たちが普段目にする世界は1面にしかすぎない。」

そう言われたような気持ちになった。

 

 

 

スナップ写真は、

ただ日常にあるちょっとした出来事を収めるものだと思っていた。

 

そこにある2面性を、普段は見えない裏側を

日常から見つけ出せたら、面白い。

 

1面だった世界が、身の回りが

どんどん広がっていくような気がするのだ。