ハッピーフライト
2008年、
「ハッピーフライト」という映画が公開された。
矢口史靖 監督脚本、
キャスト陣は、田辺誠一 綾瀬はるかをはじめとした豪華な顔ぶれである。
タイトルから分かるように、
飛行機や空港を舞台にしたストーリーだ。
先日、この「ハッピーフライト」を久しぶりに観た。
久し振りにというか、
もう20回は観ていると思う。
なぜか定期的に観たくなる映画だ。
映画の内容はもちろんであるが、
それ以上にこの映画に華を添えているのは、
この曲だと私は思う。
誰しもが何処かで聞いたことがあるのではないか。
フランク・シナトラの有名曲だ。
この曲をリードに、
全12曲を含むアルバム「Come Fly With Me」が発売されたのは、1958年1月のこと。
この曲について、
少し、旅客機の歴史を交えて記したい。
今でこそ、当たり前のように空を飛び、
それなりの料金を支払えば乗ることができ、
事故に遭う確率は約10万分の1だとも言われる、
安全な乗り物、飛行機。
しかし、
1980年代といえば、
これまで命がけの乗り物であった飛行機が、
ようやく長距離国際線飛行を確立させ、
旅客機の大衆化が始まろうとする、
飛行機の成長途中の時代。
それに加え
一機に搭乗できる乗客数はやっと100-200人、
料金も高く、
現在より墜落事故なども多く発生している。
一般市民にはまだ容易に手が出せる乗り物ではないのが実際のところだっただろう。
そんな飛行機の発展途中の時代に、
フランク•シナトラは
「Come fly with me
Let's fly, let's fly away.」〜♪と歌うのである。
「鳥たちを越えることができる」という歌詞には
なんだかロマンを感じるし、
「ハネムーンには空の旅がベストだ」なんて言われたら世界を旅したくなる。
まさに、当時のアメリカの人々に
空への夢を与えたのではないだろうか。
この曲を含んだアルバムは、
全米チャート1位に輝くことになる。
近い将来、
宇宙飛行士以外の人が月に行けるようになったら、
「さあ月へ行こうよ!」的な曲を出すアーティストが出てくるということかもしれない。
飛行機に乗って空にいる優雅さというより
これから大空へ飛ぶんだという高揚感。
搭乗する便のチケット、
様々な言語が飛び交う空港内、
大勢の人が行き来するロビー、
スーツケースを引きずる音、
ずらっと並ぶ飛び立つ前の飛行機、
搭乗口や便名が表示された大きなパネル、
搭乗時間を知らせるアナウンス、
グランドスタッフ、パイロットやCA、整備士、
非日常的。
そんな空間でこの曲を聴いていたい、と
私は強く感じる。
飛行機に乗る機会などあまり多くはないが、
次もきっと空港ではこの曲を聴こう。